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コラム「事業承継を取り巻く法律はご存じですよね?」

今回は、事業承継を考えるときに、知っておかないといけない法律のお話です。経験豊富な経営者の方でも、案外、このあたりの法律の基本をご存じないかたもおられます。あまりに簡単すぎて「つい思い込んでいた」ということはよくある話。

ある経営者のかたも、「会社の株をもっていないと社長になれない」と思い込んでおられました。

そんなことありませんよね?まずは少しクイズ形式で、事業承継を取り巻く法律を学んでいきましょう。

1.事業承継○×クイズ

代表取締役は、その会社の株式の過半数を持つものでなければならない。
会社の取締役は、その会社の社長が選任する。
社長は、役員会において、取締役をクビにすることができる。
会長は、会社の代表権は持てない。
どんなことがあっても、株主から議決権を取り上げることはできない。
社長が死亡したとき、その社長名義の不動産を会社に相続させることができる。
再婚相手の「連れ子」は、法定相続人である。
遺言で、「2つの兄弟の内、兄に全財産を相続させる」とすれば、全財産を兄に承継させられる。
法定相続人以外の人に、相続させることはできない。
10贈与は一人110万円まで非課税なので、両親からもらえば、220万円までは贈与税がかからない。

皆さま、いかがでしたでしょうか?○×つけることができましたでしょうか?答え合わせをすると、実は1番から10番まですべて「×」です。皆さま何問正解することができましたか?

2.会社(法人)の基本的構成

 まずは「会社法」から確認してまいりましょう。会社の歴史は、はるか400年前までさかのぼります。皆さん、歴史で勉強されたことがあると思います。世界初の株式会社とは、「東インド会社」です。この時代、船旅にはまだまだ、危険が伴いました。貿易には、高い航海技術や性能のよい船が必要なのはもちろんのこと、それ以上に多くの労働力と莫大な費用が必要でした。この時代、ヨーロッパではまだ、香辛料の類は栽培することができなかったため、胡椒は大変貴重なものでした。多くの富を求める国々はこぞって、香辛料の獲得に乗り出していたのです。

オランダ商人たちは出資し合って船隊を構成し、1595年、アムステルダムを出発して喜望岬を超え、一路、東インドへと向かったのです。旅は困難の連続で、半数以上の命を失うという結果となりましたが、それでも残った船には多くの商品が積み込まれ、結果は黒字。この後、オランダ国内の様々な港町の商人たちはこぞって出資し合い、ポルトガルより多くの船を東インドへと送り出しました。そんなオランダの東インド進出に、イギリスが触発されないわけはありません。彼らは、1度の航海ごとに資金を集めて、船が戻ってきたら元本と利益を分配する、という、1回ごとの決算方式を取ったのです。これが世界初の「東インド会社(East India Company:EIC)」。資金集めだけでなく労働力も保有する合本会社です。1601年3月、4隻の船に500人以上の船員が乗った船隊が東インドに向けて出港しました。

 この歴史を理解すれば、会社の「株主」がどういう存在かおのずと見えてくると思います。貿易のためには大きな資金を集めたいわけですから、少しでも多くの人から集めたいのです。お金さえあれば能力は問わない、というのが株主です。当然、株主はお金を出すだけで、危険がいっぱいの航海船には乗りません。一方で、その貿易を指揮する船長(社長)は、当然高い専門知識と経験が求められます。船に乗って、現場でリーダーシップを発揮します。

これが会社法の基本原則である「所有と経営の分離」です。株主は、会社の目的だけ定めて、お金を出資します。株主総会で経営を委任する経営者を選任し、任せます。経営には口出ししません。毎年の株主総会で決算に基づいて利益の分配(配当)を受け取ります。

 ✓経営者(取締役)は、株主総会の普通決議(出席株主の過半数)で選任(解任)されます。
 ✓株主と経営者(取締役)は、別の役割です。経営者(取締役)が株主である必要は全くありません。
 ✓多くの中小企業では、大株主=経営者(取締役)です。その場合、経営者の地位は誰からも奪われません。
 ✓法律的には経営者は「取締役」と「代表取締役」2つのみです。代表取締役は取締役の互選で決めます。
 ✓「社長」「会長」「CEO」というのは、あくまで社内での役職の呼称にすぎません。したがって「代表取締役社長」は、法律上の「代表取締役」であり、社内では「社長」と呼ばれている、ということです。「代表取締役会長」も同じです。同じ会長でも「取締役会長」なら法律的にはヒラの取締役。名刺の肩書が「会長」だけなら「社内的には会長だが、法律的には経営者(取締役)ではない、ということになります。

●株主の3つの権利●

財産権:最初の出資額(資本金)は、航海が終わり船が解体されれば残った財産は返してもらう権利があります。
配当権:利益がでればその利益は、株主に分配されます。それが配当です。
議決権:株主総会はすべて多数決で決議される。その多数決に参加する権利。

3.株式の承継

 たとえば、事業承継させたい兄と事業には関係なく東京で公務員をしている弟がいるとしましょう。

ⅰ)株をすべて兄に承継する:弟が財産もらえないので不公平だと争いになる。弟には遺留分(※)がある。
ⅱ)株を兄と弟で半分ずつ承継:兄が50%しか議決できないので、弟のOKがないと株主総会の決議ができない。

どちらのケースも兄弟ケンカのタネのようで、親としては悩ましいところです。解決策として、弟に「議決権のない配当優先株式」を渡すという解決策があります。そうすることで、財産権としては兄弟半分ずつしても、株主総会に弟は呼ばれることはなく、すべての総会決議を兄が自分で議決することができます。

4.相続にまつわる民法と相続税法

 事業承継には相続問題がつきものです。法律的には民法と相続税法の世界になりますが、広範深淵すぎてとてもこの紙面ではまとめられません。一部の基本だけを簡単にまとめたいと思います。

 先代(被相続人)が死亡したとき、その財産を相続する相続人は誰がなれるのでしょうか?答えは、誰でもなれます。

一般的には法定相続人(配偶者+直系卑属)ですが、血がつながっていない愛人や家政婦さんでも相続人になれます。ただし法定相続人以外の相続人の場合、その方が負担する相続税は2割加算されてしまいます。また「誰でも」なれると言いましたが、あくまで相続人は「人」でないといけません。ですから「会社に相続させる」ことはできません。会社に財産を渡したいとすれば「寄付」ということになります。その場合、無償で財産を受け取った会社のほうは相続税はかかりませんが、その代わりにその受贈益に対して「法人税」が課税されます。

 最後に「贈与」について、解説します。相続には「法定相続人」という考え方がありますが、贈与にはありません。贈与は「いつでも」「誰にでも」できる非常に自由なものです。その代わり「贈与税は非常に高い」というデメリットがあります。なぜなら、税務署は「贈与」はまるで宝くじのようにタダでもらえてラッキーだったでしょ?=税金いっぱい払ってね、という考え方です。110万円までは無税ですが、110万円を超えるとあっというまに累進課税で55%まで税率があがります。

 事業承継の株式承継を「相続」と「贈与」で組みあわせた場合、どちらにも問題があります。

 相続:×先代が死ぬまで株式が移転できない。
    ×もし相続時に業績が良いと株価が高いことになり、相続税も高くなってしまう。

 贈与:×110万だとすこししか贈与できない。
    ○退職金を払ったりして業績が赤字になれば株価が下がる。

この「相続」と「贈与」のメリット/デメリットを享受する制度が「相続時精算課税制度(生前相続」です。例えば、役員退職金を1億円払って決算すると、一時的に株価が下がります。このタイミングで後継者に一気に生前贈与するわけです。何もしなければ55%という高額の贈与税が取られるので、そこで「相続時精算課税制度」を申請します。そうすることで高い贈与税は課税されず、将来相続が発生した時に、贈与時の「安い株価」で「安い相続税」を計算してもらえます。「事業承継税制」もありますが、「相続時精算課税制度」で解決できるケースも多いのでご検討ください。 「遺留分」とは、相続人の最低限の相続分のことです。被相続人(亡くなった方)は、自分の財産を誰にどう相続させるかを自由に決めることができ、そのために遺言書という制度があります。しかし、たとえば遺言書に「全財産を愛人のA子に相続させる」と書かれていると、本来は遺産を受け継ぐ権利のある人が、まったく受け取れないことになってしまい、残された遺族の生活が保障されなくなってしまいます。そこで、民法では一定範囲の相続人に対して最低限もらえる財産を保障しています。これを「遺留分」といいます。権利(最低限の相続分)は法定相続分の半分です。遺言書で「長男に全財産を相続させる」と記載してあった場合でも、次男は自分の遺留分として、遺産の1/2×1/2=1/4に相当する額の金銭の支払を長男に請求できる権利があります。

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