コラム「その借入金返せますか?続」(2 / 2)
2021年 新年早々に緊急事態宣言が発令され、コロナの厳しさが続いております。また昨年から開始した「事業承継の科学」シリーズですが、「自社で検討したいので、ワークシートをつけてほしい」という要望がありました。できる限り紙面にて反映させていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
1.前回の復習&ワーク
ということで、前回の復習ワークから続けたいと思います。前回のメインテーマは「貸借対照表」した。普段、損益計算書は皆さん見られても、なかなか貸借対照表まで目が届いていないかもしれませんが、実は非常に大事な資料です。特に経営者の皆さんが一番気になるのは、銀行からの借入金です。これを返済できるのかどうかが、一番のポイントです。その確認のワークを一緒にしてみましょう。
いかがでしたでしょうか?簡単にできますので、ぜひ一度やってみてください。個人事業主の方でもできますよ。
2.2021年 コロナ禍の弊害は続く
さて、ここからが新しいトピックスです。新年早々ネガティブな内容で恐縮ですが、1月8日から2度目の緊急事態宣言が発布され、国内のコロナ禍はまだまだ収束が見通せない状態です。いつかはワクチンや治療薬、抗体によって、人間がコロナと共存できる日が来るのでしょうが、それまで耐えられない中小企業が多すぎます。
マスコミでのコメンテーターの発言や政治家の答弁を聞いていると、「まだまだ中小企業の厳しさが伝わっていないなあ」と思わざるを得ません。一番感じるのは、「中小企業の多くの経営者が借入金を抱えて経営している」という事実です。普段私たちは商店街を歩いていて、「あっ、ここのお店閉めちゃったんだ」と思うことはよくあると思いますが、そこには必ず人生のストーリーがあります。お客さんからみると「このお店大好きだったけど、仕方ない。ほかのお店に行くか」ということですが、その閉店した経営者の人生はそんなに簡単には切り替えられません。閉店しても「在庫を抱え、借入金は残り、でも、自分も家族も生活していかないといけない……」。そんな深刻な人生のストーリーが残されるわけです。もちろん多くの経営者の方が、他の仕事をしながら月3万円ずつでも返済して借入金をリセットされるケースが少なからずあります。しかし、今わたしたちが考えるべきは、「そうなったらどうしよう?」ではなく「そうならないように何をすべきか?」ということです。
3.今年、追加で借入れをしてもいいのか?
私のクライアントのかたの中にも、「2020年コロナ融資を借りたが、それも使い果たしてしまった……。2021年もう一度借り足さないとやっていけない……」という悲痛な声が昨年末から耳に入るようになってきました。会計事務所としては力の見せ所。精一杯の支援をして、資金繰りを維持し、経営改善に向かっていくように全力を尽くします。
その時の考える1つの手法が「損益分岐点分析」です。
4.損益分岐点分析のしかた
ここで今月のワークを行いたいと思います。途中までは前頁と全く同じです。1つ加わったの「コロナ禍で瀕死の重傷の時、いくら借入すれば耐えられそうですか?」という試算です。仮定として、この追加の「さらに借りたい金額」はコロナを乗り切るために、すべて費消されてしまうものと想定します。
つぎのワークに進みましょう。2つの数字が必要です。まず皆さんは自分の会社(お店)の毎月の維持費(固定費)はご存じですか?たとえば、人件費や家賃、光熱費などが該当します。すこしソロバン入れて考えてみてください。
もう1つは「粗利%」これはすぐにわかりますよね。例えば食材費が40%かかる飲食店なら100-40=60%です。
次の式は、簡易的なものなので、「税負担は考えているのか?フリーCFで考えるべきでは?」などのご意見があるかもしれませんが、ここでは読者の方が自分でワークできるもの、ということで考えて作成しております。
政府方針を受けた対応で、2021年1月下旬から順次、コロナ対策融資の上限が、4,000万円から6,000万円まで引き上げられます。コロナ禍が長期化する中で大変ありがたいわけですが、一方で、さらに追加で借りることがクライアントの幸せにつながるのかどうか、会計事務所ももちろんですが、クライアントの経営者も真剣に考えなければなりません。コロナ禍の後に、自分のお店を維持して借入金を返せる力を取り戻せないなら、安易に借入金を増やすことは未来の負担を大きくし、経営の破綻のリスクを増やしてしまうことになります。このリスクを会計事務所は第三者的に検証しなければなりません。それが、顧問の会計事務所の重要な役割です。